概要
熱帯の劇作家・演出家である黒川麻衣が、現代演劇に対する深い探求と経験を積んだ可能性ある俳優の技術向上を目的とした研究機関として熱帯ラボを設立。
約10年前後のキャリアを持つ、これからの小劇場界を担う俳優たちと共に約3か月にわたる中期ワークショップをおこない、その研究発表の場として〈LABO×EXPO〉を開催。



熱帯ラボによせて
たとえば10年近く所属している劇団があり、名前もそれなりにある俳優たち。
舞台経験があるだけに自分の長所も短所も把握しているし、だからこそ向上心も強い。

だからこそ苦手なものを克服したいと考えてはいても、公演のための稽古は期間限定でそんな余裕はない。そもそも次の公演でそういった配役がめぐってくるとは限らない。
通常稽古がある劇団に所属しているならばいいが、大抵の小劇団においては、そういった基礎的な稽古を行っていないので、やはり克服する機会はまったくといっていいほどない。
また、新しいものを吸収したくても、客演の話が常にあるとは限らない。
実力を試すべくワークショップに参加したいと思ってはみても、現在の演劇ワークショップの大半は演劇経験の浅い、もしくはまったくない受講生に向けたものがほとんどだ。

演劇を続けるかどうかもわからない未経験者には学ぶべき場所がある。演劇を続けていく確固たる意思を持った経験者たちには学ぶべき場所がない。
この矛盾にも似た構造は残念極まりない。

本当にワークショップが必要としているのは、そんな経験値のある俳優たちなのではないのだろうか。

こうした命題を確かめるべく、熱帯ラボは誕生したのである。



メンバーについて
一般的にワークショップというのは受講者が演出家を選ぶが、熱帯ラボは原則として私自身が声をかけて募っている。

集ってくれたメンバーは劇団員や、過去に共演したことのある俳優だけでなく、客席から興味を抱いていた方たちをお誘いし、賛同してくださった方たちだ。
どなたも演劇に情熱を持つ、意識の高い熱心な俳優ばかりである。
熱帯ラボの現場は同じ舞台に一同に会すことすら珍しいメンバーで賑わっている。
有能で魅力ある俳優たちと演劇を探求できることは演出家としてこの上ない喜びである。